ただ何もせず、時間がゆっくりと過ぎていくのに身をまかせる。
ゲームもせず、SNSも見ず、読書もせず。
かといって、瞑想やマインドフルネスをするわけでもなく。
ただ、思うままに「ぼんやり」としているだけ。
そんな時間に罪悪感を覚えたり、逆に「どんな効果があるのだろう」と気になったりする人は多い。
実は、この「ぼんやり時間」には、驚くほど多くの良い効果がある。
この記事では、「何もしない時間」が心と脳にもたらす作用をまとめてみよう。
✅この記事の概要
- 刺激に弱い人ほど「何もしない日」が必要。
- 「ぼんやり時間」が心の休息になる根拠。
- デフォルトモードネットワーク(DMN)が働く仕組み。
- 副交感神経が優位になり、心身がゆるむ理由。
- ぼんやりすると創造性が戻る。
目次
「何もしない時間」と罪悪感
この記事を作るにあたり試しに検索してみると、わずかな入力で「何もしない 罪悪感」という候補が表示される。
なぜ私たちは「何もしない」ことに罪悪感を抱くのだろうか?
「なにかしなければ」という焦り
私たちは社会から、こんなふうに求められている。
迅速に、正確に、てきぱきと
実際に、「てきぱき」という言葉には、どこか前向きで良い印象がつきまとっている。
しかしこれは、「よく動くことはいいことだ」というステレオタイプ的な思い込みにすぎない。
自己啓発本には「人生は短い。行動するときに行動するべきだ」といった啓蒙も多い。
はっきり言えば、こうした主張は個人の性質やペースを無視している。
こうした思い込みが積み重なり「なにかしなければ」という焦燥感に、私たちはいつも追われるようになってしまう。
できない自分にイライラしてしまう
例えば、仕事でぐったりした週末。
「せっかくの休日なんだから、なにかしなきゃ楽しめない」と焦った結果、気づけばSNSを眺めて終わっていた。
そんな経験、誰にだってあるはずだ。
- 資格の勉強をしようと思ったのに、結局できなかった。
- 買い物に行こうと思っていたのに、腰が上がらなかった。
- 部屋を片づけようとしても、気力が湧かなかった。
私も何度も同じ経験をしてきた。
夜、布団に入った瞬間に「今日も何もできなかった…」とイライラし、そんな自分を責めてしまうのだ。
でも、本当は責める必要なんてない。
穏やかに1日を過ごして、暖かい布団で眠れる。それだけで、十分に良い日だと私は思う。
たしかに、その状態が何か月、何年も続いていたら問題かもしれない。
しかし、そうでないなら別に罪悪感なんて抱く必要はないのだ。
言葉からのイメージ
「何もしない時間」と聞くと、人は以下のようなイメージを思い浮かべるだろう。
- 怠けている気がする
- 時間を無駄にしている感じがする
これは単なる脳の勘違いであり、心理学ではこれをフレーミング効果と呼ぶ。1
フレーミング効果
人は「得をする枠組み」で情報が提示されると、慎重になり「リスクを回避」しようとする。
また「損をする枠組み」で情報が提示されると、逆に「リスクを冒しやすく」なる。
たとえば手術の説明で「死亡率10%」と言われるより、「生存率90%」と言われたほうが安心できる。
意味は同じなのに、印象は大きく変わる。
この場合、「何もしない」という言葉が「損をしている」ように感じる枠組みになってしまうのだ。
しかし、これには簡単な解決方法がある。言葉の枠組みを変えればいい。
| 得をする言葉 | 損をする言葉 |
|---|
回復の時間 回復の日 余白 | 何もしない時間 何もしない日 怠惰 |
これだけで「何もしない」ことに罪悪感を感じなくなる。
フレーミング効果は日常のあらゆる場所に潜んでいるニャ。
なぜ「何もしない時間」が必要なのか
ここからは、なぜ「ぼんやりする時間」が大切なのかを見ていこう。
「ほんやり時間」が心を休める
ぼんやりする時間には、心を静かに休める働きがある。
「ぼんやりしているときほど、心身は深くリラックスしている」ことは、科学的にも裏づけられている。
これは「今この瞬間」に意識を向けるマインドフルネスとも違う。瞑想のように呼吸に集中する必要もない。
本当にそのまま「あるがままの自分」でいればいい時間だ。
「あるがまま」の自分
- 思考が勝手に漂っていくままに任せる
- 口を開けて、少しだらしない顔になってもいい
- 「あ〜〜」と力が抜けた声が漏れてもいい
- ただ、全身をふっと脱力させる
座禅のように姿勢を正したり、マインドフルネスのように集中したり、胡坐をかいて「かっこいいポーズ」をとる必要はない。
軟体生物のように「ぐんにゃり」としているだけで、人はちゃんと回復する。
刺激に疲れやすい内向型・HSPという気質
もし自分が「人より疲れやすい」と感じるのであれば、あなたは内向型かHSPの気質を持っているのかもしれない。
人との交流でエネルギーを消耗しやすい内向型
あらゆる情報や刺激を敏感に受け取りやすいHSP
これらは「生まれつきの傾向」、もしくは「変えにくい性質」であると考えられている。2
だからこそ、日常の些細な出来事や人との関わりだけでも大きく疲れてしまう。
内向型やHSPにとって、刺激を受けない静かな時間は「贅沢」ではなく「必要」なのだ。
外向型の人が「少し休むだけ」で回復できる場面でも、内向型やHSPは回復にもう少し時間がかかることが多い。
だからこそ、内向型やHSPにとっては「なにもしない日」こそが、もっとも効率的な休息になりえる。
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脳科学から見る「何もしない時間」の効果
脳科学の観点からも、「ぼんやりする時間」にはさまざまな良い影響があることが示されている。
デフォルトモードネットワークが働き始める
人が「何もしないでぼんやりしている」とき、脳ではデフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれる領域が優位になる。3
DMNは、外側の世界ではなく心の世界を整理するシステムだと考えられている。
- 記憶の整理
- 感情の処理
- 思考のまとまり(ひらめきもここから)
- 自分の価値観・方向性の調整
たとえば、こんな何気ない「ぼんやり」の瞬間がある。
- 明日のご飯は何にしよう…とふわっと考える。
- 洗濯物をたたみながら、今日の出来事を自然と思い出す。
- 窓の外を眺めていたら、急に昔の記憶がよみがえる。
こうした「意識していない思考のゆらぎ」が起きているとき、DMNは静かに活性化している。
つまり「ぼんやり」=「DMNの活性化」なのだ。「ぼんやりする時間」とは、脳が勝手に片づけを始める時間でもある。
意識して頑張る必要はなく、ただ「ぼんやり」しているだけで脳は裏側で働いてくれる。
ぼけ〜っとしてる間に、脳が勝手にお片づけしてくれるニャ。
副交感神経が優位になり、身体が休まる
ぼんやりしているとき、身体の中では副交感神経がゆっくりと優位になる。
これは「休息と回復」をつかさどる神経で、いわば心身のブレーキ役だ。
忙しい日常では、私たちの自律神経はほとんどが「アクセル」にあたる交感神経に偏っている。
外向きの刺激が多いほど、体は常に緊張状態になりやすい。
- 呼吸が深くなる
- 心拍が落ち着く
- 血圧が安定する
- 筋肉の緊張がほどける
これは瞑想や呼吸法のように意識的に整える必要はない。
ただぼんやりするだけで、身体は勝手に回復モードへ切り替わる。
ぼんやりしていると眠くなることがある。
これは脳内で、α波のような「リラックス時に出やすい脳波」が増えることがあるためだと考えられている。
この状態はDMNの働きとも関係しており「ぼんやりしているときの眠気」は心と脳が回復しはじめているサインでもある。
創造性が戻ってくる(インキュベーション効果)
何かに行き詰まったとき、少しその場から離れると急にアイデアが浮かぶ ── そんな経験はないだろうか。
心理学ではこれをインキュベーション効果と呼ぶ。
インキュベーション効果
課題から意識を外し、脳を「何もしない状態」にすることで思考が自然と整理され、新しい発想が生まれやすくなる現象
DMNが働いているとき、脳は裏側で問題を再構成し、別の視点から解決策を見つけようとする。
そのため、意識的に考え続けるよりぼんやりと余白をつくったほうが創造性が高まる。
- ふと思いつくアイデアが増える
- 整理できなかった問題が急にまとまる
- 直感的なひらめきが戻ってくる
つまり「何もしない時間」は怠けではなく、脳が創造性を取り戻すための大切な工程でもある。
刺激に弱い人は「何もしない時間」を作る
ここからは、私の経験談だ。
私は刺激が多いと疲れやすい
基本的に、私は人見知りだ。
といっても話しかけられれば普通に話せる。ただ、話した後にぐったりと疲れてしまうのだ。
人見知りには、実は2種類あるといわれている。
人見知りの種類(シャイネス)
恐怖タイプ:見知らぬ人や新しい状況に対して強い不安や恐怖が生じるタイプ。
自意識タイプ:「他人は自分をどう見ているのか?」という評価への意識が強く、気疲れしやすいタイプ。
こちらのサイト4でも、どちらのタイプにも遺伝的な要因が関係していると説明されている。
どちらのタイプであっても、人と接することは強い刺激になりやすい。ありがたいことに(?)私はこの2つのタイプをどちらも持っている。
そして重要なのは、人見知りかどうかに関わらず、対人場面での不安や緊張は誰にでも起こる。
つまり、生まれつき「刺激から離れて回復するための時間」は誰にでも必要。ということだ。
これは「人との関係」に活力を見出す外向型も同じだ。内向型やHSPはなおさらである。
思考の断捨離をやめる時間
私が時々意識していることが、情報の断捨離(デジタルデトックス)と「何もしない時間をつくること」た。
デジタルデトックスにも脳疲労の回復効果があるが、ここでは割愛する。
私の趣味はランニング、筋トレ、水泳、読書、ノベルゲーム、ヨガなどだが、どれも身体か脳に一定以上の負荷や集中が必要なものばかり。
ヨガやマインドフルネスには「今に集中」することで回復効果があるが、それだけでは疲れが取り切れないと感じていた。
だからこそ私が選んだのは、もっと力を抜いて「ぼーっとする時間」を意識してつくることだった。
- デスクチェアをギリギリまで倒して全身をゆるめる
- 顔の力を抜いて、完全にボケ~っとする
- 思考をコントロールせず、浮かんでくるものに任せる
何度も言うが、これはマインドフルネスではない。「あれもしたいな」と、思うままに考えを漂わせるだけだ。
少なくとも、無意識にSNSを見続けるよりはデフォルトモードネットワークが働きやすく、はるかに体にいいはずだ。
まとめ|何もしない日があってもいい
週末の休みなどで「なにもしない」ことに罪悪感を覚えるなら、それは単なる認知のバグだ。
本当は回復の時間なのに、「何もしない」という言葉がもつ誤ったイメージに引っ張られているだけである。
何もしていない時間は「デフォルトモードネットワークが働き、副交感神経が優位な状態」だ。
そう考えれば、何もしない日こそが、むしろ心身を整えるための大切な時間だと分かるはずだ。
だから、時間ができたなら気負わずに「ぼんやり」してみればいい。
✅ この記事のまとめ
- 「何もしない日」は怠けではなく、脳と心の自然な回復時間である。
- 「ぼんやり時間」にはDMNの活性化が起こり、思考と感情が静かに整理される。
- 副交感神経が優位になり、心拍・血圧・呼吸が整い、深いリラックスが得られる。
- 創造性が戻るインキュベーション効果により、ひらめきやアイデアが生まれやすくなる。
- 刺激に弱い内向型・HSPにとっては「何もしない日」こそ最も効率的な休息になる。
✨ぼんやりする方法(超簡単!)
- 全身をゆるめ、顔や身体の力を抜いて「脱力モード」にする。
- スマホを手から離し、あえて「暇」をつくる。
- 浮かんできた思考をそのまま眺めるか口に出す
- マインドフルネスのように思考をコントロールしようとしない。
免責事項
本記事は、筆者の経験や公開されている研究・書籍をもとにまとめた参考情報です。
内容をそのまま絶対視せず、ご自身のペースや体調、生活の状況と照らし合わせてお読みください。
ここで紹介する内容は、あくまで自己理解やセルフケアのヒントを目的としたものです。
また「何もしたくない状態」が長期間続いている場合、記事のテーマとは性質が異なる可能性があります。
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参考文献
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