自己反省は良いことなのだろうか。
それとも、必要以上に自分を追い詰めてしまう悪い習慣なのだろうか。
目覚まし時計のセットを忘れて寝坊した
大事な書類を置いたままにしていたら、紛失してしまった
買い過ぎてしまい、賞味期限内に食べきれない
部下を強く叱り過ぎて、後から自己嫌悪に陥る
反省にもさまざまな種類があるが、結論から言うと「ネガティブな反省」は成長につながりにくい傾向がある
だからこそ自己反省は、自分を責めるのではなく「次はどうするべきか」を考えることが最善、だと私は考える。
この記事では、自己反省のポジティブな面とネガティブな面、そして近似している「内省」について紹介する。
目次
自己反省とはなにか?
自己反省とは「自分の行動と、その結果を振り返ること」を指す。
ポジティブな自己反省
自己反省の良い点は、「過去の自分を客観的に見つめ直せる」ことにある。
反省のきっかけが「自分の行動」にあっても、「他者からの影響」にあっても、問題はない。
自分の行動を振り返る姿勢そのものが、前向きな価値を持つからだ。
失敗の原因を突き止め、改善し、次に活かす仕組みをPDCAサイクルというが、自己反省はその出発点にもなり得る。
ポジティブな自己反省の例
失敗したが、次はどうすれば成功できるだろうか?
今回の失敗の原因は何だったのだろうか?
なぜ自分は「反省している」と感じているのだろうか?
このように、自身の成長や改善を目的とした自己反省は、非常に有益だ。
ネガティブな自己反省
ネガティブな自己反省の問題点は、「過去の出来事にとらわれ、自分を責め続けてしまう」ことにある。
反省のきっかけが失敗や他人の指摘であっても、思考の矛先が「行動」ではなく「自分自身」に向いてしまう。
結果として、改善策が見えなくなり、同じ反省を繰り返しやすくなる。
原因分析よりも感情が優先されるため、次に活かす行動が定まらない点が、ネガティブな自己反省の大きな特徴だ。
ネガティブな自己反省の例
なぜ自分は、いつも失敗してしまうのだろうか?
自分には、そもそも向いていなかったのではないか?
もう取り返しがつかないのではないか?
このように、自己否定に終始する自己反省は、成長や改善につながりにくい。
内省との違いは?
内省とは、「自分の内面を強く意識し、深く考えること」を指す。
自己反省と内省は似ているが、ネガティブな自己反省が続くと、ネガティブな内省へとつながりやすい。
内省は「内面を深く考えること」
内省は、「自分の内面全体を深く考える」行為だ。
つまり、自己反省における表層的な「行動の結果を振り返ること」の延長線上にある。
内省の良い点は、自分自身をより立体的・客観的に捉える力が育つことだ。
内省の力
行動だけでなく感情や価値観にも目を向けることで、思考の幅が広がる
自分の判断や反応の癖に気づきやすくなる
他者の立場や感情を想像する力につながる
内省とは、単に考え込むことではなく「より良く理解しようとする思考姿勢」そのものだ。
過剰な内省は悪い方向にも?
人は一般的に、「良いこと」よりも「悪いこと」のほうが記憶に残りやすい。
この傾向は心理学で、ネガティビティ・バイアス(negativity bias)と呼ばれている。
この性質は内省にも当てはまり、考えを深めるうちに、ネガティブな思考が頭から離れなくなることがある。
こうした状態は負担が大きいため注意される傾向がある。
ネガティブな自己反省は、この思考を招きやすく、結果としてネガティブな内省につながる。
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自己反省を「前向きに活かす」には
では、自己反省を日常生活や仕事の中で前向きに活かすには、どうすればよいのだろうか。
どこでも使える4ステップ
感情と現実を切り離す
なぜ失敗したのかを考える
具体的な改善策を考える
改善策を実行する。
目標の定め方を変える
まずは、自己反省の「目的」を見直すところから始めてみよう。
人が目標を定める際には、4つの考え方があることを示した理論がある。
それが、動機づけ心理学における「達成目標理論(Achievement Goal Theory:AGT)」だ。1
この理論では、「自分の成長を意識した努力」が、最も目標達成につながりやすいとされている。
つまり、自己反省においても「自分の成長」を基準に考えるほうが、結果的に良い成果を得やすくなる。
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| 目標タイプ | 説明 |
|---|
① マスタリー接近目標 (努力 × 自分基準) | 自分の能力やスキルを高めることに意識が向いたタイプ。 |
② マスタリー回避目標 (現状維持 × 自分基準) | 今あるスキルや知識を失いたくないという動機で行動するタイプ。 |
③ パフォーマンス接近目標 (努力 × 他者比較) | 他者より優れていることを示すために努力するタイプ。 |
④ パフォーマンス回避目標 (現状維持 × 他者比較) | 他者の評価を強く意識し、失敗を避けようとするタイプ。 |
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自己反省を「言い換える」
人は、「言葉に備わったイメージ」に大きく左右される生き物だ。
「反省」や「反省会」という言葉には、どうしてもネガティブな印象がつきまといやすい。
そのため、自己反省を前向きに活かしたい場合は、言葉そのものを言い換える工夫も有効だ。
私が普段意識して使っている言葉は「次」である。
次はどうするか?
次に活かすにはどうすればいいか?
次につながる行動は何か?
このように「自己反省」という言葉を使わず「次」を基準に考えるだけでも、自然と未来志向へと切り替わる。
過去よりも「今と未来」
自己反省においては、「悪い考えにとらわれてしまう人」もいれば、「前向きに捉えられる人」もいる。
しかし、両者に共通しているのは、「誰もが失敗する人間である」という事実だ。
誰もが失敗するのだから、失敗そのものを過度に恐れる必要はない。
重要なのは「過去」ではなく「今」と「これから」をどうするかだ。
過去から何を学び、それを今と未来にどう活かすか。
そこにこそ、自己反省の本当の意義があると、私は考えている。
まとめ|反省することは悪いことじゃない
自己反省は、自分を責めるための行為ではない。
行動や思考を客観的に見つめ直すことで「自分を客観視する力」が育ち、経験は「次につなげる成長」へと変わる。
ネガティブな感情に引きずられず、未来に目を向けた自己反省を意識することが、前向きな変化への第1歩になる。
✅ この記事のまとめ
- 自己反省は「自分を責める行為」ではなく「次につなげるための思考」
- 成長や改善を目的にした反省は、前向きな行動を生む
- 過去にとらわれ過ぎる反省は、ネガティブな思考を強めやすい
- 大切なのは「今、何を学び、次にどう活かすか」を考えること
免責事項
本記事は筆者の経験や公開された研究・書籍をもとにまとめた参考情報です。
内容を鵜呑みにせず、ご自身の状況や感覚と照らし合わせてお読みください。
ここで紹介する内容は、あくまで自己理解のヒントに過ぎません。
専門的な判断や緊急の対応については、ページ下部に記載した相談窓口もあわせてご確認ください。
参考文献
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