刺激を求めない内向型は、どのように「お金という刺激の塊」をコントロールすればいいのか?
また、もっとも「合理的」に蓄財するにはどうすればいいのか?
人間の感情的バイアスを排除し、数学的・歴史的・統計的に最も「妥当な解」はインデックス投資だ。
プロの運用成績はあなた方が支払っている手数料に値しないという結論に達した。1
バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』第5章より引用
そして、インデックス投資とは「刺激を排除すること」を前提とした、静かな蓄財ゲームでもある。
お金による心の波風を鎮める最も合理的な方法は、
生活の余剰資金を市場の平均(インデックス)に預け、その存在を日常から切り離すことだ。
しかし、内向型でも「長期的にインデックス投資を継続するのは心理的に困難である」ことも事実。
現金比率・防衛資金・儲けたい欲求・SNSの圧力・暴落時の混乱
特に「暴落時の混乱」では、インデックス投資ですらも「破滅的な刺激」に襲われる。
この記事では、私が実践している「合理的にお金のコントロールを手放す方法」と、その理由を解説していきたい。
目次
人は「合理性」より「感情」で動く
私たちは「お金」と「可能性」という2つの要素に支配されている。
蓄財の最適解は『インデックスファンド』
ネットの普及により、他者や社会の「お金に関する情報」を誰でも簡単に手に入れられる時代になった。
それでも、長期的な蓄財という観点では、市場平均に投資する「インデックス投資」が最も合理的だ。
市場平均とは、すべての投資家の成績を集計した結果である。
誰かが平均を上回れば、その裏側には必ず平均を下回る誰かがいる。
さらに、アクティブ運用には売買コストや運用報酬といった、確実に差し引かれるコストが存在する。
ウォーレン・バフェットがインデックス投資を勧めるのも、この構造的な不利があるからだ。
日本の経済評論家・山崎元も、全世界株式のインデックス投資が最も合理的だと繰り返し述べていた。
インデックス投資が支持されている理由は、「有名人が勧めているから」ではない。
誰が運用しても、市場全体の成長を低コストで取り込めるという合理性があるからだ。
長く続けるほど「平均に回帰」する
個別株やアクティブファンドで短期的に大きな利益を上げたとしよう。
その運用者は「自分は投資が上手い」と感じるかもしれない。実際、優れた分析能力を持つ場合もある。
しかし、長期的に見ると、アクティブ運用の成績は市場平均に近づく傾向がある。
これは「平均回帰」と呼ばれ、短期的な成功がそのまま将来も続くとは限らないことを示している。
さらに、業績の悪い企業や失敗したファンドは市場から姿を消すため、失敗例は表に出にくい。
結果として、統計やSNSでは成功したケースだけが目立つ。これを『生存者バイアス』という。
つまり、短期的に市場平均を上回った経験が、「自分は投資が上手い」という錯覚を生みやすい。
個人が市場平均を長期的に上回り続けるのは、経済学的に見て極めて難しい。
加えて、金融会社に運用を任せれば、報酬やコストが確実にリターンを削る。
だからこそ、低コストで市場全体に投資できる「インデックスファンド」が合理的な選択となる。
それでも「市場の平均を超えたい」と考える投資手法がなくならないのは、なぜだろうか?
投機ブームと人の欲望
投資の最適解が知られているにもかかわらず、現代でも破滅に繋がる投機ブームは繰り返されている。
これは、人が「お金に関しては、過去の失敗から十分に学ばない」ことを示している。
投機ブームの歴史
チューリップ・バブル(1630年代、オランダ)
日本のバブル経済(1980年代後半、日本)
ドットコム・バブル(1990年代末〜2000年、アメリカ)
住宅バブル / リーマン・ショック(2000年代、アメリカ)
仮想通貨 / 暗号資産ブーム(2017年、2021年〜)
NFT(2021年〜2022年)
見て分かる通り、数百年にわたって、同じ構図が繰り返されている。
時代や対象は違っても、共通しているのは「将来、大きく儲かるかもしれない」という期待だ。
平均的で退屈なリターンよりも、一攫千金の物語のほうが人の心を強く刺激する。
人は合理性よりも「少し未来の可能性」に支配されやすい。
つまり、世の中にある投資の多くは、脳を揺さぶることが目的の「刺激的なエンターテイメント」である。
なぜ「正解」を続けられないのか?
インデックス投資は「限りなく正解に近い」蓄財方法だ。
しかし、この投資だけを淡々と続けられる人は少ない。
前述した通り、人は合理性よりも感情で動く生物であり、感情を完全に排除することはできない。
放置するのは「退屈」
インデックスファンドは、投資したあとは基本的に「ただ待つだけ」の静かな蓄財ゲームだ。
市場平均という性質上、成果は緩やかにしか現れない。
最低でも5年、一般には10〜30年という長期継続が、統計的にもっとも妥当とされている。
数ある投資手法の中でも、インデックス投資は際立って退屈で、刺激が少ない。
一方で「投資」という言葉には、「お金を増やす」「儲ける」といった刺激的なイメージが強く結びついている。
そのため、退屈であることと、お金を増やすという期待は、感情のレベルではしばしば矛盾して感じられる。
そして、「投資について調べる人」は刺激を求めており、刺激を求めない人は、そもそも投資の世界に近づかない。
SNSという「パーティ会場の噂話」
個人的に、投資においてもっとも警戒すべき存在はSNSだと感じている。
市場が暴落しても、暴騰しても、必ず誰かが大きな声で騒ぐ。
個人レベルでも「いくら増えた」「どれだけ減った」といった話題が絶えない。
これらは、短期的な成果に過度に注目させる強い刺激だ。長期のインデックス投資目的の人にとっては典型的なノイズとなる。
さらに、インデックス投資の世界ですら「全世界株派」と「米国株派」といった対立構造が生まれ、意思決定を曇らせる要因になる。
インデックス投資に近いETF(VYM・HDV・SCHD・VIG)を巡る議論も同様で、しばしば本質以上に注目を集めてしまう。
しかし、合理性を突き詰めるなら、意思決定を排除して、全世界株のファンドに淡々と投資するだけで十分だ。
暴落は必ず起きる
投資において、誰も避けることのできない現象が「大規模な暴落」だ。
これはインデックス投資であっても例外ではない。
歴史を振り返れば、株式市場では資産価値が40〜60%程度下落する局面が、周期的に発生してきた。
暴落のたびに「資本主義は終わるのではないか」といった悲観論が広がる。
しかし結果として市場は回復し、長期的には成長を続けてきた。
とはいえ、それとこれとは別の話だ。私自身もインデックス投資家だが、正直に言って暴落は怖い。
理屈では理解していても、資産が大きく減少する現実は、人の精神に強烈な負荷を与える。
刺激への耐性の有無に関係なく、多くの人がここで冷静さを失う。
そしてこの局面で、堅実に続けてきたインデックス投資家の一部も市場から離脱してしまう。
私の「刺激を断つ」投資戦略
では、実際に「私という個人がどのような投資をしているか」を見ていこう。
私の投資手法は、徹底した「意思決定の排除」にある。
感情を排除した「見ない」投資法
現時点での私の投資手法は非常にシンプルだ。4行で説明できる。
生活防衛資金(直近2年分の生活費)を下回らないように管理
毎月10万の自動積立
投資先は全世界株式のインデックスファンド(100%)
証券口座を見ない
もっとも堅実で、もっとも合理的で、もっとも退屈で、もっとも心理的な安全性を配慮した形だ。
私はここ1年口座を見ていないため、資産額の予測はできても、合計資産額は分からない。
また、投資情報も見ない。調べない。
情報が勝手に目に入ってくる環境には絶対に飛び込まないようにしている。
資産の取り崩しはどうするか?
決めていない。
将来的にいくらになるか、何に使用するか、の考えは「今の自分はどうあるべきか」と関係しないからだ。
投資は日常から徹底的に切り離す。あくまでも「最適なお金の管理方法」としか思っていない。
あえて、言うのであれば合理的な「毎年資産額の3~4%を切り崩す」なんていうのはどうだろうか?
余ったら慈善団体に寄付をするのもいいかもしれない。
ただし「出口戦略は決めない」のは、私の目的と生活環境だから言えること。
普通は「決める」ことは前提になるため、おそらく万人には当てはまらないと思われる。
「私が」決めた投資戦略
これらの「投資先・コントロール法・出口を考えない」というのは、私個人の考え方だ。
「投資先・投資理由・投資期間・資産の取り崩し方」というのは、千差万別で正解はないと思っている。
家族がいる場合(子供に資産を残したい)
独身の場合(未来の不安を解消したい)
短期的に増やしたい場合(刺激が足りない)
老後の生活を豊かにしたい場合
私にとっての投資とは「お金を増やすこと」ではなく、精神の安定を手に入れること。
見えない将来やお金のコントロールを考え続けることは、私には刺激が強すぎる。
お金とは、目的ではなく手段であるべきだ。
だからこそ、投資界でもっとも合理的な選択肢を選んで、投資について考えるのを止め、コントロールを手放した。
市場には、数十年に一度のペースで大きな下落局面が織り込まれている。
重要なのは、下落が起きたときに「何をしなくて済む設計」になっているかだ。
私が重視しているのは、十分な現金を確保し、日常生活を続けられる状態を作ることである。
よって「今の自分」に集中するため、お金の不安を消すために、私にだけ当てはまる投資戦略と言える。
まとめ:投資は物語の主役ではない
性格心理学の分野では、内向型は外向型に比べて強い刺激を求めにくい傾向があることが知られている。
その結果として、複雑で刺激の強い投資ゲームから距離を取りやすく、インデックス投資と相性がよい可能性がある。
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本記事で紹介した内容は、あくまで私個人の価値観と生活環境に基づいた投資戦略である。
私は、投資や金融の専門家ではない。誰かに助言できるほど、体系的な知識を持っているわけでもない。
「お金という刺激の塊をどう管理するか」を考える中で、独学で身につけてきた投資戦略である。
ただし、「刺激を最小化し、意思決定を減らす」という点においては、一定の合理性を持つ設計だと考えている。
もちろん、投資に万能の正解はない。この方法を誰にでも勧めたいわけではない。
私にとって投資とは、資産を増やす競争ではなく、不安や欲望と距離を取るための生活設計の一部である。
お金は、日々の意思決定や精神的な安定に、想像以上の影響を与える。
だからこそ私は、「どう増やすか」よりも、「どう管理し、どう距離を取るか」を重視している。
支出が運用に影響を与えてはならない。2
お金を貯めるには様々な方法があるが、自分にあった方法を見つけ、それに従うのがよい。
私たちがお金を貯めるのは、人生を豊かにするためだ。
チャールズ・エリス『敗者のゲーム』17,20章より引用
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免責事項
本記事は投資・金融・心理の専門家による助言ではありません。
内容は書籍や調査資料、筆者の経験をもとにした参考情報です。
内容を鵜呑みにせず、あくまで自己理解を深めるためのヒントとしてご活用ください。
具体的な判断が必要な場合は、専門家や公的な相談窓口の利用もご検討ください。
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