勤勉で誠実な人。
これは社会で「評価されやすい性質」と言ってもいいだろう。
- ルールを守り、対人関係で摩擦を起こしにくい。
- 物事を最後までやり遂げる粘り強さがある。
- 計画的に動き、周囲から信頼されやすい。
実際、心理学で用いられる性格理論であるビッグファイブにはこの「誠実性」という因子が存在する。
誠実性(勤勉性)とは?
人の行動のコントロール力を示す性格特性。
ビッグファイブ理論では、性格は「外向性・神経症傾向・誠実性・開放性・協調性」の5つに大別される。
「誠実性(Conscientiousness)」は、目標に向かって努力する力や、衝動を抑えて行動を調整する力を表す。
この心理学モデルに照らすと、「誠実性が高いことは良い/低いことは悪い」という価値観は不適切になる。
誠実性の低さには「環境変化に対する瞬発力・行動力・柔軟性」という魅力があるからだ。
この記事では「誠実性が高い人/低い人」の特徴を、科学・行動・体験の3つの観点から解説していく。
✅この記事の概要
- 誠実性とは何か:行動コントロールの性質と6つの下位因子
- 誠実性の高低で起きる違い:成功しやすさ/柔軟性・創造性
- 筆者の体験:誠実性93という「強迫的タイプ」から見えるリアルな特徴
この記事は心理学の知見を個人の自己理解に役立てることを目的としています。1
そのため、学術論文の厳密な解説や、専門家としての助言を目的としたものではありません。
ビッグファイブ理論に関する因子解説は『IPIP』を参照しています。
IPIP(International Personality Item Pool)-NEO
目次
誠実性とは何か?
まずは、現代心理学で言う「誠実性」とは何なのかを見ていこう。
誠実性は「行動をコントロールする力」
「誠実性」と聞くと、人に対して誠実に接する態度を連想しがちだ。
しかし心理学での「誠実性」はより行動面に関わる概念で、別名「勤勉性」とも呼ばれる。
ひと言でいえば、自分の行動をどれだけ管理・調整できるかを示す特性である。
誠実性の「自己コントロール力」
高い(コントロールが強い):目標に向けて継続できる、計画的に行動できる、衝動に流されにくい
低い(コントロールが弱い):リスクを恐れず新しい挑戦に飛び込みやすく、瞬発的な行動を取る傾向
誠実性が高い人は、衝動に左右されにくく、依存にも陥りにくい。
一方、誠実性が低い人は刺激の影響を受けやすく、のめり込みやすい傾向が見られる。
もちろん「必ず」そうなるわけではなく、あくまで統計的な傾向ニャ。
ビッグファイブで見る誠実性
ビッグファイブ理論は、現代心理学で最も広く使われている性格モデルの1つである。
このモデルでは、5つの主要因子それぞれに、さらに細かな「下位因子(ファセット)」が存在する。
国際的(IPIP)に使われている誠実性の下位因子は、次の6つだ。
- 自己効力感(Self-Efficacy):自分ならできると信じて行動できる傾向。
- 秩序性(Orderliness):整理整頓や計画立てが得意な傾向。
- 義務感(Dutifulness):責任を果たすことを大切にする傾向。
- 達成努力(Achievement Striving):目標に向かって努力し続ける傾向。
- 自己規律(Self-Discipline):やるべきことを粘り強く続けられる傾向。
- 慎重さ(Cautiousness):行動前によく考え、リスクを避ける傾向。
これら6つの要素は、大きく分けると次の2つの側面を持つ。
誠実性の2つの側面
- 能動的成分:目標に向けて動き、努力する力
- 抑制的成分:衝動を抑えて行動を調整する力
つまり「目標に向かう力」と「自分をコントロールする力」というアクセルとハンドルの両方を司る因子だ。
また、この二つの側面を考えると少し面白いことが見えてくる。
世の中の「自己啓発本・ビジネス本」が書いている内容の多くは、この誠実性の下位因子を高めるための方法なのだ。
🔥 能動的成分:目標に向かって行動を「推進」するエンジン
| 因子 (Facet) | テーマ・性質 | 得られる行動(アウトプット) |
| 自己効力感 | 能力に対する確信 | 「挑戦を始める」推進力 |
| 達成努力 | 卓越性を求める粘り強さ | 「努力し続ける」持久力 |
| 義務感 | 責任や規範の重視 | 「やり遂げる」信頼性 |
🧊 抑制的成分:行動を「統制・管理」するブレーキと舵
| 因子 (Facet) | テーマ・性質 | 得られる行動(統制・管理) |
| 秩序性 | 整理・計画への好み | 「体系的に計画する」能力 |
| 自己規律 | 衝動や感情の抑制 | 「継続する」自制心 |
| 慎重さ | 行動前の熟慮 | 「リスクを考慮した」決定力 |
つまり、社会は無意識のうちに「誠実性の高さ」を求めていると言える。
実際、研究では「誠実性が高い人は健康面、収入、対人関係を頑健に予測する」とまで言われている。
「自分に何が必要か」を考えて、自発的に伸ばすのもありニャ。
誠実性は遺伝するのか?
社会は「誠実性」を高く評価する。しかしこの誠実性には生まれつきの要素。つまり遺伝も関与している。
ビッグファイブにおける各因子の遺伝的要因は40〜60%程度関与しているとされている。
もしこれが事実なら、「努力する力」にも生得的な違いがある可能性が示唆される。
性格は「遺伝+環境」の影響が複雑に絡み合って形成されるため、どちらか一方だけで決まるわけではない。
ただ、この事実を踏まえると「誠実性が低い=怠けている」という解釈は無理がある。
生まれ持った特性の違いを責めるのは、やはり偏った見方だと感じる。
誠実性は「努力の量を決める才能」と言える部分もあるニャ。
誠実性が高い人は成功しやすい?
前の章でも触れたが「誠実性が高い人ほど成功しやすい」というのは、統計的にはあながち間違いではない。
誠実性が高いと努力の継続力や計画性、目標に向けた粘り強さが強まりやすい。
こうした特徴が結果的に「成功しやすさ」につながると考えられている。
誠実性が高い人の特徴
- 計画的に動ける:衝動よりも目的を優先しやすい。
- やり抜く力がある:一度決めたことを継続しやすい。
- 期限を守る:約束や予定を破りにくい。
- ミスが少ない:慎重に判断し、確認を怠らない。
- 信頼を得やすい:安定した行動と責任感が評価される。
社会的な「良いこと」と相関がある
誠実性が高い人は、いわゆる「社会的に良い」と評価されやすい特徴と相関がある。
ここで言う「良い」とは、道徳的な意味ではなく、社会生活を円滑に進めるうえで有利になりやすい性質のことだ。
たとえば、誠実性の高さは次のような指標と関連すると言われている。
- 学業成績が高い:計画性や持続力が成績に反映されやすい。
- 仕事のパフォーマンスが安定する:責任感・締め切り遵守・ミスの少なさが評価される。
- 健康的な生活習慣を維持しやすい:睡眠・運動・食事が乱れにくい。
- 犯罪率が低い:衝動抑制の強さが反社会的行動を抑える。
- 人間関係のトラブルが少ない:言動の安定さが信頼につながる。
もちろん、これはあくまで統計上の「傾向」であり、誠実性の高さがそのまま人生の成功を保証するわけではない。
ただ、誠実性が社会的にプラスに働きやすい場面が多いのは事実だ。
逆に言えば、誠実性が低いからといって「ダメな人」というわけでもない。
後の章で触れるように、誠実性が低い人には別の強みがあり、それは環境によって光る。
高すぎると「強迫的・完璧主義」
誠実性が高いこと自体は悪いことではない。
ただし、高すぎる場合は「強迫的」「完璧主義」になりやすいと指摘されることがある。
誠実性の下位因子には、秩序性・自己規律・慎重さといった「コントロールの強さ」に関わる要素が含まれている。
これらが極端に高くなると、次のような傾向が表れやすい。
- 完璧に仕上げないと不安になる
- 計画通りに進まないと強いストレスを感じる
- 小さなミスにも過剰に反応してしまう
- TODO管理やルールに自分を縛りつけてしまう
- 人にも「こうあるべき」を強く求めてしまう
この状態は、行動が「丁寧」なことを超えて「こうしなければいけない」という思考になってしまうことすらある。
後述するが、私がそうである。
誠実性が高い人は、まじめさ・責任感・慎重さゆえに評価されやすいが、同時に「自分を追い詰める」力も強い。
社会的には長所として扱われがちだが、本人の内側では負担を抱えていることも珍しくない。
誠実性が低い人は「ダメ」なのか?
では、「社会が求めている誠実性」とは逆に、誠実性が低い人はどう見ればいいのだろうか?
誠実性が低い人の特徴
- 思いつきで動きやすい:柔軟で瞬発力がある。
- 新しい刺激に惹かれやすい:好奇心が高く、行動力が出る。
- 計画よりも「今」を優先しがち:状況に合わせた適応が早い。
- 細かいルールに縛られにくい:環境が合えば創造性が発揮される。
- 飽きやすい:ただし興味のある分野では没頭しやすい。
誠実性が低いことの魅力
何度も述べてきたように、現代社会では「誠実性が高い人」が有利になりやすい。
誠実性が低い人の中には、注意が散りやすかったり、衝動的に動いてしまったりする特性を持つ人もいる。
それらの特性の評価は限定的だ。しかし本当に「欠点」なのだろうか?
結論から言えば、違う。
「あくまで今の社会では、誠実な人が評価されやすいだけ」であり、本質的には誠実性の高低に優劣はない。
これは道徳の話でも、励ましでもない。進化論の話だ。
進化論から見る「誠実性の低い人」
変動淘汰という言葉がある。これは「環境が変われば有利な性質も変わる」という仕組みだ。
人類の多様性は負の頻度依存淘汰という「少数派の特性が集団を支えるメカニズム」によって保たれてきた。
未知の環境に挑む場面では、柔軟でリスクを取る「探検家タイプ」が貢献したと考えられている。
簡単に言えば、誠実性が低い人は「探検家」で、人類の開拓者でもあった可能性も示唆されている。
ただし「未知」に関する行動力はビッグファイブ因子の「経験への開放性」が強く関与しているとされる。
進化論的な考え方をするならば、ビッグファイブの特性はトレードオフ。
すなわち、良い面/悪い面だけを持った特性なんて存在しないことになる。
例えば、あなたがサバンナに食料と水だけを持って放り込まれたとしよう。
草むらがガサガサと揺れる。お腹をすかせたライオンだ。
誠実性が高い人は「安全に、計画的に、静かに」行動する傾向があるだろう。
だが、誠実性が低い人は「即座に逃げる」などの反射的な行動力に現れやすい。
どちらが生存に直結するかは分からないが、少なくとも100%の正解はない。
誠実性の低さとは、新しい物への「適応力・機動力・柔軟性」という魅力に繋がる。
これは完璧主義傾向のある「誠実性の高い人」では真似できない。
誠実性が低い人の「柔軟性」を活かす
仕事の場面では、誠実性が低い人の「柔軟性」が強みになることがある。
計画が崩れても素早く軌道修正でき、思いついたアイデアをその場で試せる。
変化の多い現場やクリエイティブな仕事では、この「瞬発力のある適応力」が大きな武器になる。
誠実性には「目標に向かって努力し続ける」「自己規律を保つ」といった要素が含まれる。
しかし、変化の激しい業界では「今を見切り、新しい選択肢へ素早く移る柔軟性」が重視される場面も多い。
これは、競争における重要な優位性のひとつである。
さらに面白いのが、人の認知バイアスだ。
社会では誠実性が評価されやすいのに、物語になると「計画に固執しない・衝動的な行動力」の方が魅力的に映る。
直感的に判断してほしい。次の2つのどちらに惹かれる?
① 成績は上々だが「今」に固執する部長
② 「伝統的な暗黙のルールを破って」成果を上げる新人
小説やアニメ、ドラマを見れば分かるように、主人公に多いのは圧倒的に②番だ。
人は「つまらない統計」より「面白い因果関係」に惹かれる。
さらに「明らかに間違いである今」に固執する心理は、行動経済学でいう「サンクコストの誤謬」にもつながる
サンクコストの誤謬=間違っていると理解していても既に払った対価を惜しんで撤退できなくなる現象
結局のところ、どちらにも良い面と悪い面があり、「どちらが優れている」と単純に評価できるわけではない。
私のケース|すべて高い「強迫的タイプ」
ここからは、私自身のビッグファイブ診断結果をもとに「誠実性」という特性をもう少し具体的に見ていく。
私のビッグファイブ診断結果(誠実性93)
誠実性 93:非常に高く、他者から信頼されやすい。
- 自己効力感 (16 / High):自分ならできると信じて行動する。
- 秩序性 (18 / High):整理整頓や計画立てを徹底する。
- 義務感 (16 / High):責任を果たすことを強く重視する。
- 達成努力 (15 / High):高い目標に向かって努力し続ける。
- 自己規律 (14 / High):困難でも作業を続けられる。
- 慎重さ (14 / High):行動前に必ずよく考える。
私の特徴として、すべての下位因子が高い。数字だけ見れば「望ましいこと」のように思えるかもしれない。
「やる」と決めたことは絶対にやりとげるための努力をする。
健康習慣を意識した生活ができている(介護士としての夜勤だけがネック)
将来のために「お金」にどう向き合うかを常に考えている
しかし、あまりに高すぎると柔軟性がなくなり、偏った行動パターンになることがある。
特に「秩序性18・義務感16」という数値は、私の「自分を追い込みやすい」という傾向をよく表している。
高すぎる誠実性が生む「不自由さ」
私は、とにかく「ルーティン化」することが大好きだ。
しかし、この徹底ぶりがそのままストレスにつながることも多い。
毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きたい(仕事の都合で崩れるとイライラする)。
本棚は「あいうえお順・サイズ順・出版順」など、矛盾する分類を同時に満たしたくなる。
仕事では決められた手順から外れると落ち着かず、気持ちが乱れる。
一度「やらない」と決めたことは、状況が変わっても徹底して避けようとしてしまう。
こうした傾向は誠実性そのものというより、私が置かれてきた環境の影響が強いように感じている。
また、私の誠実性が常に高かったわけではないことを物語る、次のような過去の経験がある。
数年前に「SNS依存・ゲーム依存」を経験している。
とあるゲームには、ひと月に200時間近く費やしたことがある。
この「過去の私」と「今の私」のギャップは、人の特性が固定されたものではなく、時間をかけて変化しうることを示している。
遺伝と環境の影響の割合は個人差が大きく、年齢によっても変動するため、明確に切り分けることはできない。
自己理解によって「生まれつきの傾向」は少しずつ見えてくるニャ。
まとめ|誠実性は「自己運用スタイル」
高い人も低い人も、どちらも個性
一般的には、あるいはビッグファイブの数値だけを見ると「誠実性が高いほど良い」と誤解されやすい。
たしかに社会的には、誠実性の高さが評価される場面が多い。
しかし、それをそのまま「優秀さ」と結びつけるのは、あまりにも単純だ。
誠実性が高い人にも、低い人にも、それぞれの強みと生きやすさがある。
性質は優劣ではなく、あくまで自分らしさのスタイルにすぎない。
✅ この記事のまとめ
- 誠実性は「行動のコントロール力」で、高低は優劣ではない。
- 高い誠実性は成功と結びつきやすいが、強迫的になり負担にもなる。
- 低い誠実性には柔軟性・創造性という強みがある。
- 筆者のケース(誠実性93)からも、特性は環境で変化することが分かる。
✨私の伝えたいこと
- 誠実性は「良い/悪い」では測れない。
- 高い人と低い人は、ただスタイルが違うだけ。
- 大事なのは、自分の強みが光る環境を選ぶ。
免責事項
本記事は、筆者の経験や公開された研究・書籍をもとにまとめた参考情報です。
内容を鵜呑みにせず、ご自身の感じ方や状況と照らし合わせながらお読みください。
ここで紹介しているのは、あくまで自己理解のヒントに過ぎません。
専門的な判断や緊急の対応が必要な場合は、ページ下部に記載した相談窓口。
あるいは公認心理師や臨床心理士などの専門家への相談もご検討ください。
参考文献
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