あなたは、人と関わる上でなにか苦労をしていないだろうか?
- 面接やプレゼンでうまく話せない
- 人と会ったあとにどっと疲れてしまう
- 人と過ごすのも楽しいのに、一人の時間がどうしても欲しくなる
- 飲み会や大人数の場が苦手で、生きづらいと感じる
- 「自分はちょっと変わっているのかも」と思う
もし当てはまるなら、あなたは内向型かもしれない。
一人の時間でエネルギーが回復しやすく、外部刺激が少ない環境で力を発揮しやすい人のこと。
外向型とはエネルギーの補給スタイルが異なる。
イメージできない方でも、内向型かどうかを簡単に見極める方法がある。
「人と関わる時間よりも、一人の時間により価値をおいているかどうか」
これは心理学の専門用語を並べるよりも直感的で、すぐにイメージできる指標だと思う。
私自身も超のつく内向型で、これまでの人生にはその証拠のようなエピソードが無数にある。
この記事では、私の体験や一般的に言われる内向型の特徴を紹介する。
さらに「よくある誤解」「外向型との違い」「内向型の強み」などを分かりやすく解説していく。
✅ この記事の概要
- 内向型とはなにかを直感的に理解できる
- 内向型にありがちな誤解を整理して安心できる
- 外向型との違いを具体例にイメージできる
- 内向型の強みを人生に活かすヒントが見つかる
- 内向型は欠点ではないと前向きに受け止められる
内向型の基本
この記事では分かりやすさを優先して、ユング心理学の「内向型/外向型」の考え方1だけを紹介する。
ただし、このブログではそれだけにとどまらず、内向型を4つの視点から整理している。
- エネルギーの回復方法としての類型(内向型/外向型)
- HSPとの関わり(別概念だが重なる部分あり)
- ビッグファイブによる性格特性
- 自己認識として「自分をどう理解しているか」
内向型とは?
内向型と外向型は、エネルギー (精神的な活力・意欲) の回復方法が異なる。
この回復方法の違いが、内向型と外向型を分ける最もシンプルで、根本的な基準と言える。
エネルギー回復方法
📚 内向型
一人で過ごして充電
読書・ゲーム・静かな推し活
🎤 外向型
人と関わって充電
会話・イベント・仲間と楽しむ推し活
ただし、この基準も「そうだと考えられている」だけで、実は内向型と外向型を区別する定義は心理学的にもまだあいまいだ。
この言葉が広まったきっかけはユングの心理学(1920年代)だが、現代の科学においても「これが内向型だ」と断言できる分類は存在しない。
理由は単純で、人間という存在が複雑すぎて、精神面を全てカバーできるような分類方法が存在しないからだ。
ただし多くの研究では、内向型と外向型は「生まれ持った性質」とされ、成長の過程で大きく変わるものではないと考えられている。

難しく考えず「人との関わりが元気の素か、一人の時間が元気の素か」で見れば十分ニャ。
だからこそ、私の経験や心理学に関する書籍から、直感的に理解できる基準を紹介しよう。
それは「人と接する時間と一人でいる時間、どちらにより価値をおいているか」だ。
こう考えると自身が内向型か外向型か、直感的にイメージしやすくなる。


内向型チェックリスト
あなたはいくつ当てはまる? |
---|
一人の時間でリフレッシュする |
物事を深く考えてから行動する |
少人数や一対一を好む |
観察力があり周囲をよく見ている |
大人数の雑談では疲れやすい |
広く浅くより狭く深い人間関係を好む |
自己表現は文章や創作でしやすい |
静かな時間や場所が心地よいと感じる |
※あくまで「よくある傾向」をまとめたもの。ゼロでも内向型でないとは限らない。
誤解されやすい内向型の特徴
社会で生きるために、内向型の人も自分の性質に合わない環境に身を置くことがある。
しかし、社会はあなたが内向型かどうかを考慮してくれるわけではない。内向型の人も外向型のように「飲み会大好きです」「パーティー大好きです」と思われるかもしれない。
だからこそ、内向型はしばしば誤解されてしまう。ここからはよくある4つの誤解を見ていこう。
HSPと内向型は違う
HSP(Highly Sensitive Person)とは「刺激に敏感で感受性が高い人」を指す心理学用語だ。
HSPと内向型は「生まれつきの性質」「刺激に敏感」という特徴で一致しているが、両者は根本的に違う。
簡単に説明すると
HSPと内向型の刺激に対する反応
- 内向型はエネルギーを効率的に使うために、意識的・無意識的に静かな環境を選びやすい。
- HSPは刺激を受け取るフィルターが最初から薄いため、避けたくても情報が入ってきてしまう。
つまり、内向型は「エネルギー消費の質を求める」のに対し、HSPは「脳に入る情報量が多い」かの違いだ。



内向型は「燃費の良いバッテリーだけど、出力を上げたら消耗する」みたいな感じニャ。
HSPは「センサーが超高感度すぎて、普通の音や光でもビクッと反応してしまう体質」みたいなものだニャ。
とはいっても、内向型と共通している部分も多く、さらに研究では「HSPのうち約7割が内向型。残りの3割は外向型」とも言われている。
脳の複雑な仕組みが前提なため、誰もが勘違いするのは無理のない話なのだ。


人見知りと内向型は違う
人見知りとは、初対面の相手や親しくない相手に対して、強い緊張や不安を感じやすい傾向のことだ。
行動上に現れ、まわりからは内気や引っ込み思案、照れ屋、コミュ障と思われることもある。
だが、内向型は必ずしも人見知りではない。
大きな違いは、人見知りは【行動の反応】で分かるのに対して、内向型は【エネルギーの向き方】だということ。
人見知りと内向型の違い
😳 人見知り
初対面で緊張して言葉が出ない
行動として分かる反応
📚 内向型
一人でいるときに心が休まる
エネルギーの充電スタイル
つまり、人見知りは後天的なスキル。内向型は生まれ持ったギフトだ。
- 初対面の人と話すことは楽しいけど、慣れていないぶん疲れやすい
- 親しくない人には、言葉の影響を考えすぎて気を使ってしまう
- にぎやかな場では盛り上がれるけど、帰宅後どっと疲れる
- 話題が浅い雑談より、じっくり語れる深い話のほうが好き
こうした振る舞いは「人見知り」ではなく、内向型の性質によるものだ。
だからこそ、人見知りと内向型は混同されやすい。
内向型の気質が人間関係に影響して、人見知りになった人も少なくないだろう。でも、その違いを知るだけで自分を責めなくてもよくなる。
私自身が人見知りの内向型なこともあり、そのことを強く実感している。
暗い人、内気な人に見えてしまう理由
内向型は反応が控えめで、大人数の場でも大声を張り上げたり、リアクションを取ったりしない。それに物事を深く考えて口数が減ってしまうこともある。
その様子が「暗い人」「内気な人」と映ってしまう原因だ。だから他人からは「内気」「愛想がない」「暗い」と誤解されやすい。
「暗い」と言われがちな人の特徴
- 服装など外見にこだわらず、食事も一人でもくもくと食べている
- 話しかけても会話が長く続かず、いつも静かにしている
- 集団に関わらず、孤立しているように見える
確かに、ネガティブな感情や経験から「暗く」見える場合もあるかもしれない。
しかし、その社会からのラベルとあなたの個性は全くの無関係だ。
- 服装に無頓着=「周りに流されず、自分の関心を大切にしている」から
- 副業のアイデアを練っていたり、独自の興味に没頭している
「暗い、内気」と言われるのはあなたの性質じゃない。それは社会が貼ったラベルにすぎない。
むしろ、その内側にある豊かさは強みになる。
無口=考えていないわけではない
グループ会議で発言しない人。会話中に黙ってしまう人。もしかすると、それはあなた自身かもしれない。
無口であることが原因で、社会的な評判が下がったり「消極的」と思われたりして、悩んだことはないだろうか。
これもまた、社会の価値観によるラベルだ。外からの印象だけであなたは判断されている。
- 会議で黙っているのは、議題について深く考えているからかもしれない
- 会話中に言葉を選ぶのは「自分の発言が相手にどう影響するか」を真剣に考えているからかもしれない
それなのに「消極的」「無口」「輪を乱している」と誤解されてしまう。あなたの中にある素晴らしいアイデアは表に出る前に消えてしまう。
ではどうすればいいのか。対策はシンプルだ。
- 会議では、まず最初にひと声だけ声を出しておく
- 人間関係では「口下手だけど」と伝えておく
必要なのは「少しの勇気」
大事なのは「黙っているけど、ちゃんと考えている」と相手に伝えること。
それが、あなたの力を正しく活かす第一歩になる。
内向型と外向型の違い
ここまで「内向型は誤解されやすい性質だ」という話をしてきたが、では具体的に内向型と外向型はどんな違いがあるのだろうか?
エネルギーの使い方が違う
内向型はエネルギーを「自分の内側」に向けるのが得意で、外向型は「人との関わり」に使うのが得意だ。
RPGゲームにたとえるなら、賢者(内向型)と勇者(外向型)の違いだ。


📖 賢者(内向型)は静かな書庫や自然の中で思索する時間に力を得る。
🗡️ 勇者(外向型)は仲間と共に冒険し、人と交流することで輝きが増す。
どちらのタイプも得意な場所が違うだけだ。そのため、合わない環境にいるとエネルギーを消耗し、本来の力を発揮できない。
内向型が人混みで疲れてしまうのは、まさにそれだ。優劣ではなく活躍できる「フィールド」が違うだけなのだ。
タイプ別|エネルギーの活かし方
📖 賢者(内向型)
得意: 静かな思索、深い集中、創造的な活動
回復: 一人の時間、静かで落ち着ける環境
🗡️ 勇者(外向型)
得意: 発表、チームでの協力、社交的な活動
回復: 仲間との交流、賑やかな場所
もちろん、仲間と冒険する賢者もいるし、一人で魔王に立ち向かう勇者もいるだろう。
それは後天的な「スキル」を身につけて上手く立ち回れるようになったり、そもそも賢者と勇者の資質を併せ持つ人がいるからだ。
求めている刺激が違う
内向型と外向型は、求める刺激の種類や質が違う。
これは単なる「感覚の違い」ではなく、生まれつきの脳機能の差に関係している可能性が研究で示唆されている。2



内向型はリラックス神経(副交感神経)が優位で、小さな刺激でも満足しやすいニャ。



外向型は戦闘モード神経(交感神経)が優位で、強めの刺激のほうがちょうど良く感じられるニャ。
イメージするなら、内向型は「スローライフ派」で外向型は「アドベンチャー派」だ。


📖 スローライフ派(内向型): 静かな環境でこそ力を発揮する。
🔥 アドベンチャー派(外向型): 仲間や新しい刺激に囲まれると輝く。
このタイプの違いは、それぞれが苦手な環境に置かれたときに特に顕著に現れる。
- スローライフ派(内向型)がアドベンチャー派の環境にいると…
-
神経が興奮しすぎて、ずっと緊張しているような状態になり、どっと疲れてしまう。
- アドベンチャー派(外向型)がスローライフ派の環境にいると…
-
刺激が足りず、なんだか退屈で落ち着かなくなり、エネルギーが減ってしまう。
どちらが良い悪いではなく、合っている暮らし方のスタイルが違うだけなのだ。
タイプ別|暮らしのスタイル
📖 スローライフ派(内向型)
スタイル: 静かな時間でエネルギーを得る
例: 読書・散歩・穏やかな趣味
🔥 アドベンチャー派(外向型)
スタイル: 仲間や刺激でエネルギーを得る
例: パーティー・旅行・新しい出会い
内向型と外向型はグラデーションで考える
性質は「内向型 or 外向型」と白黒ではなく、グラデーションで連続している。
たとえば「1~10」のスケールを想像してみてほしい。1に近づくほど内向型、10に近づくほど外向型に近い。
人は生まれたときにこのスケールのどこかに位置している。これが「性質」と呼ばれる初期値だ。
【内向型・内向型よりの両向型・両向型・外向型よりの両向型・外向型】の5つで考えると分かりやすい
これは経験や環境、適応のためのスキルを獲得。に例えると分かりやすい。
- 「人と上手く話すスキルを獲得」=外向 +1
- 「トラウマで人と話せなくなる」=内向 -3
- 「初対面でも疲れない話し方を覚える」=外向 +4
こうして環境や経験によってスキルを獲得して性格が形作られてくるが、もともとの初期値(性質)が消えるわけではない。
つまり、いくら外向的なスキルを身に着けても、内向型が集団で疲れやすいのは変わらない。
内向型の強みを「生まれ持った資質」から解説
ここまで「内向型とはなにか」を見てきたが、では内向型の人が本来持っている強みはどんなものだろうか?
よく「内向型の強み」として語られるのは「思考力」「傾聴力」「俯瞰力」といったスキル面だ。
けれども、それはあくまで後天的に伸ばせる力であって、本質的にはもっと深い「生まれ持った資質」がある。
つまり、努力して身につけるスキルではなく、最初から内向型として備わっている資質だ。
ここでは代表的な3つを紹介する。
①内向型のエネルギーの向き|一人の時間で力を取り戻せる
孤独の時間が苦痛ではなく、回復の時間になる。
内向型は外に刺激を求めるのではなく、内側でエネルギーを循環させる傾向がある。
だから一人の時間や思索に強い耐性があり、孤独をむしろ心地よく感じやすい。
- 研究や分析など、集中して取り組む作業に強い
- 静かな環境で高いパフォーマンスを発揮できる
- 孤独がエネルギー回復の時間になる
この資質は、「深く一人で取り組む活動」で最大限に生かされる。
そしてそれこそが、内向型が社会にユニークな価値を発揮できる場になる。
②深い処理力(deep processing)|情報をじっくり掘り下げられる
内向型は「考えすぎる」ではなく「深く考えられる」性質。
外向型が「幅広く・速く」情報を処理するのに対して、内向型は「じっくり・深く」処理する。
表面的な情報では満足せず、背景や因果関係まで掘り下げて理解するのが得意だ。
- 問題の本質に気づける
- 複雑なテーマを丁寧に理解できる
- 長期的な洞察を導きやすい
万有引力の法則など、歴史的な発見や理論も、この「深い処理のスタイル」から生まれてきた。
つまり、この資質は社会に大きく貢献できる内向型ならではの武器なのだ。
③内的世界の豊かさ|想像力と独創性の源泉
内向型は「内側の世界」が豊かだからこそ、創造性を発揮できる。
内向型は外の刺激よりも自分の内側に注意が向きやすい。その結果、思考や想像の領域が発達する。
これは創造性や独創性の源泉になる。
- オリジナルなアイデアを生みやすい
- 独自の視点や解釈を持てる
- 芸術・文学・科学など創造活動に向いている
外向型が社会的ネットワークから刺激を得るのに対して、内向型は内的世界から価値を紡ぎ出すことができる。
つまり、この資質は未来を切り拓く創造のエネルギーになるのだ。
内向型の強みまとめ|性質を活かして自分らしく生きる
人と比べると不安になることもあるかもしれない。けれど、内向型が持つこれらの性質は欠点ではなく、生まれ持ったギフトだ。



内向型は「じっくり考えるのが気持ちいい」タイプニャ。
脳が「静かな集中モード」に入りやすい仕組みニャ。
「内側のエネルギー」「深い処理」「内的世界の豊かさ」。
この3つを意識して生かしていくことが、内向型の強みを最大限に引き出し、自分らしく生きる力になる。
内向型の強み|3つの資質まとめ
🔋 エネルギーの向き
孤独に強い
🔍 深い処理力
情報をじっくり掘り下げる
🌌 内的世界の豊かさ
想像力と独創性の源泉
👉 この3つは内向型の生まれ持ったギフト。
内向型の生き方まとめ|強みを生かすヒント
✅ この記事のまとめ
- 内向型は「一人の時間に価値を置ける」資質を持っている
- 本質的な強みは「エネルギーの向き」「深い処理力」「内的世界の豊かさ」
- 外向型との違いは「エネルギーの回復方法」と「求める刺激の種類や質」
- 人見知り・暗い・内気といったイメージ=内向型そのものではない
- HSPとは混同されやすいが、本質的には別物
- 内向型=欠点ではなく、生まれ持ったギフト
✨ 内向型が幸せに生きるためのヒント
- 🌱 安心できる土台を整える(睡眠・運動・食事)
- 🪞 自己理解と自己受容を深める
- 🏡 自分に合った環境と人間関係を選ぶ
- 📚 孤独を味方につける
- ☕ 小さな幸福を味わう(朝日・コーヒー・読書など)
- 📈 大きな成果よりも小さな積み重ねを楽しむ
- ✍️ 考えや感覚を外に表現する(文章・作品・対話)
自分らしい生き方を選んでもいい
現代社会では、内向型は生きづらさを感じやすい。
かつて日本では「謙遜は美徳」とされ内向的な性格も評価されていたが、今はビジネスや評価の仕組みが外向型に有利な場面が増えている。
だからといって、無理に外向型に合わせる必要はない。
外向的に振る舞うスキルを身につけるのもいい
内向的な自分を受け入れられる環境を選ぶのもいい
大切なのは「周囲に合わせること」ではなく、「自分に合ったスタイルを選ぶこと」。
静かな部屋でコーヒーを飲む
朝日を浴びて一日を始める
何もせず、ただ考える時間を持つ
内向型は小さな刺激で満足できる。それだけで十分だ。
だから、これらの習慣を大切にすれば、内向型のあなたはきっと幸せを感じられる。
それでも社会の中で苦しくなることはあるだろう。
そんなときのために、このブログでは「内向型はなぜ生きづらいのか」「どう生きればいいのか」のヒントを発信している。
筆者の体験談
私自身も「内向型+HSP」として育ち、いじめやトラウマで「暗い人」と誤解されてきた経験がある。
文中に出てきた「暗い人」という表現 ―― 実はあれは私自身のことだ。
かつての私は「暗い性格」だと自分を決めつけ、不幸だと考えて毎日を惰性で過ごしていた。
けれど、自分の性質を知ってからは、人見知りや人に合わせられない性格を「内面世界に特化した資質」として受け入れられるようになった。
この記事を読んでくれたあなたも、きっと同じように「自分なりの幸せの形」を見つけられるはずだ。
内向型は欠点ではなく、生き方のスタイルのひとつ。
そのスタイルを選び直せるのは、ほかでもないあなた自身だ。
内向型に関するQ&A
- 内向型は遺伝なの?
クロ遺伝は40%~60%と言われているニャ!ただし、成長過程で遺伝的素質に引っ張られることもあるニャ!
- 内向型の強みは、どうすれば実生活で活かせるの?
クロ一人で集中できる時間や環境を意識的に確保すると、深い思考力や創造性が仕事や人間関係で活かせるニャ
心理学と脳科学から見る「内向型と外向型」の違い
心理学や脳科学の研究では、内向型と外向型の違いを多面的に説明しようとする試みが続けられています。3
ここでは、代表的な知見をわかりやすく整理して紹介します。



ちょっと難しい話だけど、自分を深く知るきっかけになるはずニャ。
ここで紹介する内容は、現時点で有力とされる仮説や研究成果の一部です。今後の科学的知見によって修正される可能性があります。
ビッグファイブ理論(Big Five Model)
現代心理学では、内向的/外向的な性格は「外向性(Extraversion)」という連続的な特性の高低によって説明されます。
つまり、「内向型/外向型」という二分法ではなく、外向性の度合いが人によって異なるグラデーションとして存在すると考えられています。


気質・性格・環境の関係
私たちの性格(パーソナリティ)は、生まれ持った気質と後天的な環境の相互作用によって形づくられます。
内向型/外向型は気質に近い要素であり、生涯を通じて比較的安定していると考えられています。
しかし、育った環境や人生経験によってその表れ方は変化し、社交スキルや行動の幅を広げることで外向的に見える場合もあります。
また、私たちは気質によって、幼少期から無意識のうちにそれに合った経験や環境を選びやすい傾向があります。
たとえば、内向型の気質を持つ子どもは、新しい場所に行ったときにすぐに行動せず、周囲をじっと観察してから動くことがあります。
これは慎重さや洞察力が強く働く気質による自然で適応的な行動パターンです。
- 気質:生まれ持った特性(内向型/外向型/HSPなど)
- 性格:気質と環境の組み合わせによって形づくられる
- 行動:経験や学習によって柔軟に変化する
「内向型」という気質そのものは変わりにくいものの、その表現の仕方は環境や経験によって柔軟に変化する——この点が心理学的にも重要な理解とされています。
たとえば、静かな環境で力を発揮する人が、経験を通じて社交スキルを身につけ、外向的に見えることもあります。
ただし、遺伝的要因と環境要因の相互作用は非常に複雑であり、現時点でもまだ完全には解明されていません。
研究は進行中であり、今後の神経科学や行動遺伝学の発展によって、新たな知見が更新されていく可能性があります。
脳の覚醒水準と情報処理の違い
心理学と神経科学の研究では、内向型と外向型では脳内の情報処理や神経伝達の仕組みに違いがあることが示唆されています。
内向型はもともと脳の覚醒水準が高い傾向にあり、刺激への反応が繊細です。
そのため、ドーパミンに対する感受性も高く、少しの刺激でも報酬系がすぐに満たされやすいと考えられています。
過剰な刺激は疲労やストレスとして感じやすく、静かな環境で落ち着くのはこのためです。
一方で、内向型はアセチルコリン系が活発に働く傾向があります。
アセチルコリンは集中や内省、創造的思考を促す神経伝達物質で、静かな時間や深い思考に心地よさを感じる理由とされています。
- ドーパミン:刺激・報酬・快感を生む
- アセチルコリン:集中・落ち着き・創造性を促す
外向型は覚醒水準が低めで、ドーパミン感受性も比較的低いため、強い刺激や社会的な活動から快を得やすいとされます。
こうした傾向は、外向型が社交的・行動的であることの神経学的背景として説明されています。
脳内の情報処理経路にも違いがあります。
内向型では情報が長く複雑な経路を通り、深い処理や内省に関わる領域が活発になります。
一方、外向型では刺激が短く直接的な経路を通り、感覚処理や情動反応に関わる領域が強く働くと考えられています。
要するに、内向型は「静的な集中」、外向型は「動的な刺激」に最適化された脳の仕組みを持っています。
どちらが優れているということではなく、脳がそれぞれ異なる環境で力を発揮するよう設計されているということです。
脳と自律神経のバランス
内向型と外向型の違いは、脳の働きだけでなく、自律神経のバランスにも表れます。
内向型は副交感神経(リラックス系)が優位になりやすく、落ち着いた環境で集中力や思考力を発揮しやすい傾向があります。
一方、外向型は交感神経(活動系)が優位で、刺激の多い社会的・行動的な場面でエネルギーを得やすいとされています。
- 交感神経:活動・緊張・行動を促す
- 副交感神経:休息・回復・集中を整えるす
この神経的な違いは、先に述べた覚醒水準や神経伝達物質(ドーパミン・アセチルコリン)の傾向とも密接に関連しています。
つまり、内向型は「落ち着きの中で集中する体の設計」 外向型は「動きの中で活力を得る体の設計」と言えます。。
HSPとの関係
HSP(Highly Sensitive Person)は「刺激に敏感な人」を指す概念で、内向型とは別の気質です。
ただし、エレイン・アーロン博士の研究4によれば、HSPの約7割は内向型であることが報告されています。
このため両者はしばしば重なって見える傾向があります。
筆者の考察として
〈HSPと内向型の両方の気質を持っている〉というよりも、〈HSPの繊細な感受性が、環境要因として内向的な性格を形成しやすくする〉可能性があると考えています。
免責事項
本記事は筆者の経験や公開された研究・書籍をもとにまとめた参考情報です。
情報をそのまま鵜呑みにせず、ご自身の状況や感覚と照らし合わせてお読みください。
ここで紹介する内容は、あくまで自己理解のヒントに過ぎません。
専門的な判断や緊急の対応については、ページ下部に記載した相談窓口もあわせてご確認ください。
参考文献
- 【ユング心理学入門〈心理療法コレクション I〉】
カール・グスタフ・ユング(著)河合隼雄(訳)創元社:2009年 ↩︎ - 論文:川原正広・松岡和生(2007)「外向型・内向型における注意機能特性と情報処理スタイルの関連性」 ↩︎
- 【HSP研究への招待:発達、性格、臨床心理学の領域から】
飯村周平(編集)/上野雄己/小塩真司/岐部智恵子/串崎真志/髙橋亜希/平野真理/矢野康介(著)|花伝社:2024年
【パーソナリティを科学する ― 特性5因子であなたがわかる】
ダニエル・ネトル(著)竹内和世(訳)白揚社:2009年
【Big Fiveパーソナリティ・ハンドブック 5つの因子から「性格」を読み解く】
谷伊織・阿部晋吾・小塩真司(編著)福村出版:2024年
【内向型を強みにする おとなしい人が活躍するためのガイド】
マーティ・オルセン・レイニー(著)務台夏子(訳)パンローリング:2013年
【内向型人間のすごい力 ― 静かな人が世界を変える】
スーザン・ケイン(著)古草秀子(訳)講談社:2015年
【こころ検定2級 公式テキスト(精神解剖学基礎)】
2024年(※メンタルケア心理士講座教材) ↩︎ - 【敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術】
エレイン・N・アーロン(著)片桐恵理子(訳)パンローリング:2020年 ↩︎