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内向型が、無理せず「自分らしさ」を取り戻すための自己心理メディア

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内向型ラボの研究所

いじめや不登校を経験しました。
そのなかで人付き合いに慎重な「人見知りの内向型」として成長してきました。

長いあいだ「生きづらさ」を感じてきましたが、少しずつ過去を受け入れ、いまは自分らしいペースで前を向いています。

このブログ 【内向型ラボ ― わたしらしく生きるための自己心理メディア】 は、内向型が無理をせず安心して暮らすための工夫や考え方を、私自身の体験や心理学・科学の知見とともにまとめた場所です。

同じように悩む方にとって日々の中で小さな幸せを見つけるきっかけになれば嬉しいです。

運営者の学びと資格

介護福祉士(2024年取得)
介護士として5年間現場に従事し、人の心や生活に寄り添う経験を積みました。
こころ検定2級(2025年取得)
心理学の基礎から応用まで体系的に学び、心の健康に関する理解を深めました。

不安を感じやすいのは悪いこと?|ビッグファイブ「神経症傾向」

不安げな人物の後ろ姿を描いた水彩画風イラスト

私は、なぜこんなにも不安になりやすいのか?

私たちは生きている中で、誰もが一度は「不安」「怒り」「悲しみ」といった感情を経験する。

これらの心理反応は、現代心理学では「心の状態の中でもっとも明確に定義されている領域」とされている。

パーソナリティ心理学には、人の性質を5つの主要特性に分類する「ビッグファイブ理論」が存在する。

ビッグファイブ理論とは?

現代心理学でもっとも広く用いられている性格モデル。

人間の性格を「神経症傾向・外向性・協調性・誠実性・開放性」の5つに分類する枠組みである。

各因子はさらに細かな下位因子(ファセット)から構成され、それらの組み合わせによって個々の性格が形づくられる。

このビッグファイブの中で「不安」「怒り」「悲しみ」などの反応性を表すのが神経症傾向(Neuroticism)である。

一見すると「高いほど悪く、低いほど良い」と思われがちだ。(研究でもその傾向が強調されやすい)

しかし私は、神経症傾向が高いことは「必ずしも悪い」とは言えないと伝えたい。

なぜなら、神経症傾向には「危険に気づく力」や「成長のきっかけ」につながる面もあるからだ。

クロ

ネガティブな感情が悪いとは限らないニャ。

この記事では、この神経症傾向がどのような特性なのかを解説していく。

✅この記事の概要

  • 神経症傾向は「不安やストレスへの反応性」を示す性格特性である。
  • 高い・低いには良し悪しではなく、それぞれに強みと課題がある。
  • 日本人は遺伝的に不安を感じやすく、感受性に個人差が出やすい。
  • 大切なのは特性を変えることより、レジリエンスと自己理解を高めること。

この記事の参考文献はこちら1

本記事のビッグファイブ理論に関する因子解説は『IPIP(International Personality Item Pool)』を参照しています。

目次

神経症傾向とは何か?

まずは、現代心理学における「神経症傾向」の基本概要を解説していこう。

ビッグファイブで見る神経症傾向

ビッグファイブモデルでは、5つの主要因子それぞれに、さらに細かな「下位因子(ファセット)」が存在する。

神経症傾向に含まれる国際基準(IPIP)の下位因子は、一般的に次の6つとされる。

  • 不安(Anxiety):心配や恐れを感じやすく、危険や不確実な状況に敏感に反応する傾向。
  • 怒り(Anger):不満やフラストレーションを抱えた際に、怒りが生じやすい傾向。
  • 抑うつ(Depression):悲しみ・落ち込み・無力感などを感じやすい傾向。
  • 自意識(Self-Consciousness):他者の目を気にし、恥ずかしさや緊張が生じやすい傾向。
  • 衝動性(Immoderation):欲求を抑えにくく、衝動的な行動が出やすい傾向。
  • 脆弱性(Vulnerability):ストレスに圧倒されやすく、不安定になりやすい傾向。

この神経症傾向という特性は、どの研究でもほぼ一貫して2つの側面から理解されている。

環境刺激への感受性:ストレス(外部刺激)を「どれだけ受け取るか?」というフィルター

ネガティブ情動性:受け取ったストレスを「どのように処理するか?」という反応性

クロ

ストレスや不安といったネガティブな感情に特化した特性だニャ。

ここで注意したいのが衝動性(Immoderation)である。

衝動性は、同じビッグファイブ因子における「自己コントロール」を司る誠実性(Conscientiousness)とも強く関係する特性だ。

神経症傾向が高いと感情に押されて衝動的になりやすく、誠実性はその衝動をどれだけ抑えられるかを示している。

神経症傾向は「衝動が生まれやすい蛇口」誠実性は「その流れを調整するホース」のようなイメージで捉えると理解しやすい。

・神経症傾向(衝動性):衝動的な感情の出やすさ
・誠実性:その感情をコントロールできるか

日本人は「不安になりやすい」傾向

ある研究では「日本人は不安を感じやすい国民が多い」と報告されている。2

これは、不安に関係する遺伝子「セロトニントランスポーター(5-HTTLPR)」の型に関係している。

この遺伝子には「SS型・SL型・LL型」の3タイプがあり、SS型はセロトニンの再取り込みが弱いとされる。

世界中の国々を調査した結果、日本はこの遺伝子の1つであるSS型の保有率がもっとも高い国だった。

セロトニンとセロトニントランスポーターSS型

セロトニンは「安心感・安定感・気分の調整」に関わる神経伝達物質である。

セロトニントランスポーターは、脳内で使われたセロトニンを再び回収する役割を持つ。

SS型はこの働きが弱く、刺激やストレスに対して不安や緊張が生じやすいとされる。

日本人は、およそ65%がSS型を持つとされ、日本人集団の持つ遺伝的な特徴の1つと言えるだろう。

クロ

あくまで遺伝的傾向ニャ。多くの部分に「環境要因」が関係するニャ。

神経症傾向は「低いほどいい」わけではない

一般には、神経症傾向が低いほどストレスに強く、高いほど不安や緊張が生じやすいと説明される。

楽観性は幸福度と結びつくため、神経症傾向が低いほど望ましいと思われるが、必ずしもそうとは限らない。

典型的な例が「リスク把握」の問題である。

不安を感じにくい状態は「リスクの過小評価」「危機感の欠如」につながりやすい。

人はしばしば「無意識の感情や、過去の経験を参照して判断する」ことがある。(ヒューリスティック)

「リスクに対する不安」が小さいということは、リスクを経験として学習・予測しにくいということを意味する。

その結果、危険の把握が甘くなることがある。

クロ

結局はトレードオフなんだニャ。

進化論的に考えると、数万年前の環境では「見えない捕食者に敏感であること」が生存に有利だったとされる。

そのため、高い神経症傾向が現代まで残ってきた理由として語られることもある。

神経症傾向の高低から分かる性質

では実際に、神経症傾向の高低にどんな特徴があるのか見ていこう。

神経症傾向が高い人の特徴

神経症傾向の高さは「危険に敏感」で「他者の不安や痛みを受け取りやすい」という傾向を持つ。

神経症傾向が高い人の特徴
  • リスク察知が早く、危険や変化に敏感に気づける
  • 他者の不安や痛みを受け取りやすく、感情的共感が強い
  • 物事を慎重に判断し、計画や準備を丁寧に行う傾向がある
  • 問題点やエラーを見つける能力が高く、細かなミスを見逃しにくい
  • ストレス刺激に強く反応し、不安・心配が長引きやすい
  • 落ち込みやすく、ネガティブな感情に影響されやすい
  • 他者の評価を気にしやすく、緊張や恥ずかしさを感じやすい
  • ストレス下で衝動的な行動を取りやすく、感情の安定が難しい

過度なストレスが心身(神経系や循環器系)に影響を及ぼした状態を「心身症」と呼ぶ。

不安を扱う領域であるため、神経症傾向はこのような症状との関連が指摘されやすい。

しかし、神経症傾向が高いということが、そのままデメリットになるわけではない。

不安から生じる「臆病さ」は、裏を返せば「あらゆる可能性を想像する力」でもある。

神経症傾向が低い人の特徴

神経症傾向の低さは、そのまま「打たれ強さ」に繋がる。

神経症傾向が低い人の特徴
  • ストレスや不安に動じにくく、気持ちが安定しやすい
  • 落ち込みや怒りが長引きにくく、感情の回復が早い
  • 他者からの評価を過度に気にせず、プレッシャーに強い
  • 緊張しにくく、初対面や新しい環境でも比較的リラックスできる
  • 物事を冷静に判断しやすく、感情に振り回されにくい
  • 楽観的に物事を捉えやすく、リスクに過度に反応しない

神経症傾向の低さは対人関係でポジティブに働きやすいが、注意すべき点として「他者配慮」と「リスク確認」がある。

誰もが神経症傾向が低く、打たれ強いわけではない。

という前提を持たないと、他者理解から離れてしまう可能性がある。

また、前述した通り「臆病さ」の欠如は、リスクを過小評価することにもつながりやすい。

神経症傾向が高い人へのヒント

神経症傾向の高低自体に「良し悪し」はないが、高い場合はウェルビーイングが損なわれやすい側面がある。
ウェルビーイング=持続的な幸福感

ここでは、神経症傾向が高い人がどのように向き合えばよいのかを解説する。

重要なのは「回復する力」

環境の中で形成されてきた「ストレスへの感受性」を大きく変えるのは、必ずしも容易ではない。

重要なのは「神経症傾向を下げる」ことよりも、「ダメージから立ち直る力」に焦点を当てることである。

つまり、レジリエンス(回復力)を高めることだ。

レジリエンスは臨床や研究の領域でも議論されている概念で、強化する方法は複数存在する。

私自身は「自分らしさへの意思」を持つことを重視してきた。

すなわち、他者と比較せず、自分で選択し、自分の価値や意味を理解すること。

心理学では、自律心な動機をもつことを「内発的動機づけ」と呼び、研究的にも有効性が示されている。

積極的分離理論

不安になりやすい、怒りやすい、悲しみやすい。こうした反応性を、成長の契機として捉える考え方がある。

Theory of Positive Disintegration(TPD)いわゆる「積極的分離理論」である。3

やや古典的ではあるが不安になりやすい人だけが到達しうる成長プロセスを示す理論。

内部的葛藤に直面し、それを乗り越える過程で自律性・自己理解・価値観の成熟が促進される。

つまり、不安や揺らぎは単なる弱点ではなく、心理的成長を後押しする重要な刺激となりうる。

神経症傾向が高い人は、環境刺激に敏感で、内省が深まりやすい。

その特性ゆえに、適切なサポートやセルフケアを土台とすれば、むしろ大きな成長を遂げやすいと考えられている。

クロ

まさに「悲しみを力に変える」理論って言えるニャ。

「ならどうすればいいのか?」という問いには、私はセルフコンパッションをお勧めしている。4

私のケース|環境刺激特化型「陽気な神経質」

ここからは、私自身のビッグファイブ診断結果をもとに「神経症傾向」という特性をもう少し具体的に見ていこうと思う。

使用した診断はこちら👉 オープンソースのBigFiveTest(診断:2025/9)

国際基準(IPIP)に基づいて設計されており、心理学的にも信頼性の高いツールである。

ビッグファイブ診断結果(神経症傾向86)

神経症傾向 86:敏感で感情的と見なされるほど高いスコア。

  • 不安 (20 / High):常に危険を感じやすく、緊張・神経質。
  • 怒り (12 / Neutral):不正には敏感だが、怒りっぽさは中程度。
  • 抑うつ (9 / Low):落ち込みは少なくエネルギーは比較的保たれる。
  • 自意識 (13 / High):他人の評価に敏感で、恥ずかしさを感じやすい。
  • 衝動性 (13 / High):欲求に抗いにくく、短期的快楽に流れやすい。
  • 脆弱性 (19 / High):強いストレス下では混乱や無力感に陥りやすい。

私の神経症傾向で最も特徴的なのは、不安と脆弱性がほぼ満点に近い一方、抑うつが極端に低いという点である。

つまり「不安やストレスの影響を強く受けるのに、落ち込みにくく陽気でいられる」という、一見すると矛盾した状態といえる。

しかしこれは、言い換えれば「回復力(レジリエンス)が非常に高い」ということでもある。

「陽気さ」の源と、残された課題

たとえ回復力が高くても、外部からストレスをどれだけ受けるかという“感受性”そのものは変わらない。

この敏感さには、過去のいじめ経験や、人間関係での失敗が影響していると考えられる。

一方で、陽気さが高いのは「人間関係以外の領域で喜びや充足を見出している」ことを示している。

私は読書やブログ執筆など「自分らしさをどう追求するか」を軸に生活しており、その領域では安定したポジティブさを保てる。

その一方で、私自身の課題としては「人間関係にまつわる不安をどのように克服するか」が挙げられる。

まとめ|神経症傾向は「個性が出る性質」

ビッグファイブ理論における神経症傾向は、端的にいえば「不安やストレスへの反応レベル」を示す指標である。

ただし、それを「低いから良い・高いから悪い」といった単純な評価で捉えることはできない。

神経症傾向が高くても低くても、それぞれに特有の強みと魅力があり、いずれも「生活の中で活かせる戦略」が存在すると私は考えている。

✨神経症傾向が高い人のヒント

  • 不安を「危険察知の強み」として扱う。
  • 落ち込みにくくするより、回復力(レジリエンス)を高める。
  • 感情に流されないために、セルフコンパッションを身につける。

✨神経症傾向が低い人のヒント

  • 他者が「同じ強さで不安を感じる」とは限らないと理解する。
  • リスクを過小評価しないよう意図的に確認する。
  • 相手の痛みに「思考」で寄り添う姿勢を持つ。

ビッグファイブと各因子の解説はこちら

免責事項

本記事は筆者の経験や心理学の知見をもとにした参考情報です。

内容を鵜呑みにせず、ご自身の感じ方や状況と照らし合わせながらお読みください。

ここで紹介しているのは、あくまで自己理解のヒントに過ぎません。

専門的な判断や緊急の対応が必要な場合は、ページ下部に記載した相談窓口

あるいは公認心理師臨床心理士などの専門家への相談もご検討ください。

参考文献

  1. 【Big Fiveパーソナリティ・ハンドブック 5つの因子から「性格」を読み解く】
    谷伊織・阿部晋吾・小塩真司(編著)福村出版:2024年
    【パーソナリティを科学する ─ 特性5因子であなたがわかる】
    ダニエル・ネトル(著)竹内和世(訳)白揚社:2009年 ↩︎
  2. 【実践 ポジティブ心理学 ─ 幸せのサイエンス】
    前野隆司(著)PHP新書:2017年 ↩︎
  3. 【傷つきやすいのに刺激を求める人たち】
    トレイシー・クーパー(著)長沼睦雄(監)時田ひさ子(監)喜多直子(訳) ↩︎
  4. 【セルフ・コンパッション[新訳版] 有効性が実証された自分に優しくする力】
    クリスティン・ネフ(著)石村郁夫・樫村正美(訳)金剛出版:2021年 ↩︎
不安げな人物の後ろ姿を描いた水彩画風イラスト

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