人の性格を捉える心理学のモデルに「ビッグファイブ」と呼ばれるものがある。
ビッグファイブでは、人の性格を5つの因子に分け、それぞれが他者と比べてどの程度の水準にあるのかを測定する。
ビッグファイブ5因子
神経症傾向:不安やストレスを感じやすく、感情が揺れやすい傾向。
外向性:刺激や対人交流を好み、活発に行動する傾向。
開放性:新しい経験や発想、美や抽象的なものに惹かれやすい傾向。
協調性:思いやりがあり、他者と調和的に関わろうとする傾向。
誠実性:計画性や責任感があり、物事をきちんと進めようとする傾向。
このブログでは以前、私自身のビッグファイブ診断の結果をもとに、これまでの人生を振り返る記事を書いた。
一年前の診断
ビッグファイブ診断と人生史で紐解く「本当の自分」
今の自分の性格は、どのように作られてきたのだろうか。 遺伝、環境、そして他者との関わり。様々な要素が複雑に絡み合っていることは疑いようがない。 自分の過去を闇…
自身の性質をウロボロスとか錬金術とか言っていたニャ…
あれから一年。現在の私のビッグファイブ数値は、どのように変化しているのだろうか。
そして、ほとんど変化していない性質があるとすれば、それは「私の核に近い性質」と考えられるのではないか。
この一年で、私の生活環境は大きく変わった。
夜勤のある介護職を退職してセミリタイアし、現在は週3日のホテル清掃の仕事をしている。
この記事では、同じビッグファイブ診断を一年ぶりに受け、その数値を比較する。
そこから、変化した性質と変わらなかった性質を見つめながら、セミリタイア後の自分がどのように変わったのか。
そしてこれからどのように生きていくのかを考えてみたい。
この記事は、心理学の知見を個人の自己理解に役立てることを目的としています。
そのため、学術論文の厳密な解説や、診断結果から人格を断定することを目的としたものではありません。
今回の診断では、IPIP-NEOを参照したオープンソースのビッグファイブ診断を使用しています。
IPIP(International Personality Item Pool)
目次
1年でビッグファイブはどう変わった?
まずは実際に、1年前の診断結果と今回の診断結果を比較してみたい。
今回も、前回と同じくビッグファイブの診断サイト「オープンソースBigFiveTest」を使用した。
このサイトでは診断結果が記録されるため、過去の結果と現在の結果を比較できる。
前回、2025年9月に受けた私の診断結果は「ここから」から確認できる。
そして、今回2026年8月に受けた診断結果は「こちら」
以下に、5つの領域とそれぞれの下位特性について、1年前と現在の数値を一覧にした。
診断データ数値比較一覧表
| 領域・特性 | 1年前 (2025/9) | 現在 (2026/8) | 変動の方向 |
|---|
| 【神経症傾向】 | 高 | 高 | 保持 |
| ・不安 | 20 (high) | 18 (high) | 減少 (-2) |
| ・怒り | 12 (neutral) | 16 (high) | 上昇 (+4) |
| ・抑うつ | 9 (low) | 5 (low) | 改善 (-4) |
| ・自意識 | 13 (high) | 15 (high) | 上昇 (+2) |
| ・衝動性 | 13 (high) | 7 (low) | 大幅減 (-6) |
| ・脆弱性 | 19 (high) | 16 (high) | 減少 (-3) |
| 【外向性】 | 低 | 低 | 保持 |
| ・友好性 | 4 (low) | 4 (low) | 変化なし |
| ・社交性 | 4 (low) | 4 (low) | 変化なし |
| ・自己主張 | 14 (high) | 14 (high) | 変化なし |
| ・活動レベル | 15 (high) | 10 (low) | 大幅減 (-5) |
| ・興奮探求 | 5 (low) | 8 (low) | 微増 (+3) |
| ・陽気さ | 15 (high) | 18 (high) | 上昇 (+3) |
| 【経験への開放性】 | 高 | 高 | 保持 |
| ・想像力 | 19 (high) | 20 (high) | 微増 (+1) |
| ・芸術的興味 | 17 (high) | 15 (high) | 減少 (-2) |
| ・感情性 | 18 (high) | 17 (high) | 減少 (-1) |
| ・冒険心 | 10 (low) | 9 (low) | 減少 (-1) |
| ・知性 | 16 (high) | 17 (high) | 微増 (+1) |
| ・リベラリズム | 14 (high) | 15 (high) | 微増 (+1) |
| 【協調性】 | 高 | 平均的 | 低下 |
| ・信頼 | 8 (low) | 7 (low) | 微減 (-1) |
| ・道徳性 | 18 (high) | 17 (high) | 減少 (-1) |
| ・利他主義 | 14 (high) | 10 (low) | 大幅減 (-4) |
| ・協力 | 17 (high) | 15 (high) | 減少 (-2) |
| ・謙虚さ | 13 (high) | 13 (high) | 変化なし |
| ・共感 | 11 (low) | 10 (low) | 微減 (-1) |
| 【誠実性】 | 高 | 高 | 保持 |
| ・自己効力感 | 16 (high) | 14 (high) | 減少 (-2) |
| ・秩序性 | 18 (high) | 19 (high) | 微増 (+1) |
| ・義務感 | 16 (high) | 16 (high) | 変化なし |
| ・達成努力 | 15 (high) | 11 (low) | 大幅減 (-4) |
| ・自己規律 | 14 (high) | 19 (high) | 大幅増 (+5) |
| ・慎重さ | 14 (high) | 17 (high) | 上昇 (+3) |
5つの特性を比較する
5つの領域を比較する表を見てみると、5つの大きな領域そのものには、それほど大きな変化がない。
性格診断は自己評価によるものなので、回答時の気分や「こうありたい」という自己イメージも関係する。
それを考慮したとしても、1年前と現在では大枠の傾向がよく似ている。
一年ぶりだから、質問内容は当然覚えてなかったニャ。
神経症傾向、外向性、経験への開放性、誠実性は、1年前と同じ水準を維持している。
一方で、協調性は「高」から「平均的」へと変化した。
こうして大きな領域だけを見ると、私の性格はこの1年間で大きく変わったようには見えない。
ところが、さらに細かく下位特性を見ていくと、興味深い変化がいくつも見えてくる。
ただしここから先は、あくまで自己評価による感想、物語(ナラティブ)である。
大きく変化した項目
各下位特性を詳しく見ていくと、生活環境の変化と関連しているように感じられる動きが見えてくる。
大きく変化した下位特性
衝動性【神経症傾向】:13 (high) → 7 (low) 【大幅減:-6】
抑うつ【神経症傾向】:9 (low) → 5 (low) 【改善:-4】
怒り【神経症傾向】:12 (neutral) → 16 (high) 【上昇:+4】
自己規律【誠実性】:14 (high) → 19 (high) 【大幅増:+5】
達成努力【誠実性】:15 (high) → 11 (low) 【大幅減:-4】
活動レベル【外向性】:15 (high) → 10 (low) 【大幅減:-5】
利他主義【協調性】:14 (high) → 10 (low) 【大幅減:-4】
まず神経症傾向を見ると、「衝動性」が13から7へ、「抑うつ」が9から5へと低下している。
もともと抑うつの数値は低かったものの、さらに低下している。
また、衝動性も大きく下がっており、以前よりも感情や欲求に振り回されにくくなった可能性がある。
一方で、「怒り」は12から16へ上昇した。これは精神的な負荷から解放された影響だろうか。
理不尽な状況や他者の行動に対する不満・怒りは、むしろ感じやすくなっている可能性がある。
誠実性では、「達成努力」が15から11へ低下する一方、「自己規律」は14から19へ大きく上昇した。
これは、自分の生活を自分で管理する力はむしろ強くなったと考えることができる。
また、外向性の「活動レベル」も15から10へ低下している。
夜勤のある介護職を辞めたことで、前のような高い活動量を必要としなくなったこととの関連も考えられる。
協調性では、「利他主義」が14から10へ低下した。
これは、他人のために自分を犠牲にせず、自分の時間や都合を優先できるようになったとも解釈できる。
社会的・外向きのエネルギーである「活動レベル」「達成努力」「利他主義」は大きく低下した。
「自己規律」の上昇や「衝動性」の低下など、自分の内側を整え、生活を管理する方向の変化が見られる。
自分で自分の人生を選んでいるという感覚、その過程で「陽気さ」が上昇した可能性がある。
もちろん、これらの変化がセミリタイアだけによって生じたとは断定できない。
とはいえ、夜勤のある介護職から週3日の仕事へと生活の負荷が大きく変わった時期と重なっている。
「原因として確定的」とは言い切れないが、無視もできない数値である、という興味深い結果になった。
変化から見える「自分の核」
ここまで見てきた数値の変化は、あくまで今回と一年前、『2回』の診断結果に基づくものだ。
ビッグファイブのスコアは、そのときの心理状態や置かれている環境などによって、ある程度変動する。
今すぐもう一度診断したら、また変わってるかもしれないニャ。
ただ、一年前からほとんど変化していない数値もある。
環境が変わったにもかかわらず維持されている特性こそ、私の「安定した性質」を表している可能性がある。
一貫している内向性
一年前と比べて、特に変わっていない特性のひとつが、低い外向性である。
外向性の6つの下位特性のうち、3つの数値は全く変わっていない。
変化していない下位特性:外向性
友好性:4 (low) → 4 (low)
社交性:4 (low) → 4 (low)
自己主張:14 (high) → 14 (high)
つまり、大勢でワイワイ群れることや、積極的に人に歩み寄るスタンスは一貫して低いままである。
「1人の時間が好き」という性質は、現状の自己認識としても疑う余地がない。
一方で、自己主張は高い水準を維持しているという、少し特徴的な組み合わせだ。
一言でいうならば「あらゆる目標に対して独立独歩の合理主義者」
自分に合わない環境から距離を置き、1人の時間を長く確保できる環境を優先した現状と整合性も取れる。
このような性質だから、セミリタイアを選んだとも言えるニャ。
道徳観と義務感のベース
道徳性や義務感、信頼や共感など、自分の行動や人との関わり方の土台となる部分にも、大きな変化は見られない。
変化していない下位特性:誠実性・協調性
義務感:16 (high) → 16 (high)
謙虚さ:13 (high) → 13 (high)
道徳性:18 (high) → 17 (high) 微減
秩序性:18 (high) → 19 (high) 微増
共感:11 (low) → 10 (low) 微減
信頼:8 (low) → 7 (low) 微減
義務感や秩序性が高いため、役割を果たすことやルールを守ることを重視する傾向が、今回も表れている。
実際、私は「何事もルーティン化しないと気が済まない」性質なので、この結果には特に驚きはない。
高い道徳性や謙虚さについても、以前から大きく変わっていない。
これらは、後で触れる「他者に対する想像力」とも関係しているように感じる。
今回あらためて興味深いと感じたのが、「謙虚で道徳性も高い一方で、信頼と共感は低い」という組み合わせ。
これは一年前の記事でも触れたが、他者を信頼することへの慎重さには、過去が影響している可能性がある。
また、読書やノベルゲームが趣味の中心であることを考えると、一つの仮説もたてられる。
すなわち、物語の中で描かれる人間の善悪と、現実との違いについて考える機会が多いからではないだろうか。
広がる想像力の世界
想像力や知性と関連する「経験への開放性」は、下位特性を見ると一年で大きな変化は見られない。
変化が小さい下位特性:経験への開放性
想像力:19 (high) → 20 (high) 微増
知性:16 (high) → 17 (high) 微増
リベラリズム:14 (high) → 15 (high) 微増
冒険心:10 (low) → 9 (low) 微減
感情性:18 (high) → 17 (high) 微減
芸術的興味:17 (high) → 15 (high) 微減
私の性質の特徴として、経験への開放性は全体的に高い一方、唯一「冒険心」だけが低い。
未知の環境や新しい活動へ積極的に飛び込むことを好まない。
空想や知的な探求、芸術などの内面的な世界に興味が向きやすい。
私は昔から、外の世界を次々と体験することにあまり興味がない(旅行やイベントなど)
さまざまな刺激や物事を自分の頭の中で考え、想像し、意味づけることに強く惹かれる性質と言えそうだ。
セミリタイア後の課題
一年前と現在の数値を比較することで、これからの人生で向き合いたい課題も見えてくる。
特に気になるのは「怒り」「他者との距離」「頑張ることとの付き合い方」の3つである。
怒りと他者との距離
数値の変化で特に気になったのが、神経症傾向の下位特性である「怒り」の上昇である。
怒り:12 (neutral) → 16 (high)
物事が思い通りに進まなかったり、不公平を感じたときに、怒りや不満を感じやすい傾向を表す。
今回は、4ポイント上昇して「neutral」から「high」へ変化した。
ここから仮説を立てるなら、次のような可能性があるだろうか。
慢性的なストレスから解放されたことで、以前よりも自分の環境や他者の行動に対して敏感になっている。
セミリタイアによって他者と距離を取り、自分にとって心地よい環境や秩序をつくりやすくなった。
その結果、以前なら生活の中で受け流していた不快感を、より明確に認識するようになったのかもしれない。
もちろん、これは1年前と現在の『怒り』だけの数値を比較しただけの仮説なので、誤差の可能性もある。
しかし、『抑うつ』は9から5へと低下し、『衝動性』は13から7へと大幅に低下している。
「落ち込み」や「不安」は減ったが、「怒り」や「不満」は感じやすくなった。
『利他主義』も減少しているため、他人のために自分を犠牲にする傾向も低下している。
そう捉えることもできる。
どのような場面で「怒り」を感じるのか。もしくは「以前なら感じていなかった場面」はあるのか。
その感情に対して自分がどのように対処しているのかを観察してみたい。
予定外に弱くなった可能性
誠実性の下位特性である『達成努力』が、大幅に減少している。
達成努力【誠実性】:15 (high) → 11 (low)
目標を掲げ、それに向かって粘り強く努力する傾向を表す。
これは、仕事を辞めて多忙ではなくなったことで、外への活動にエネルギーを使わなくなった結果とも考えられる。
活動レベル【外向性】:15 (high) → 10 (low)
私は自分の目標を成し遂げるために「努力」するというより、日々の行動をルーティン化することで継続している。
たとえば1時間以上の筋トレ、決まった時間の起床と就寝、これらを継続すること自体に努力を必要としない。
むしろ、急な予定などで「今日は10分遅く寝る」ことのほうが、強い心理的な抵抗を感じるくらいである。
介護職として働いていた頃は多忙を極めていた。
そのことは規律を重視する思考によって、予定外のことにも対応しながら「努力」していた。
しかし、セミリタイアによって生活を自分でコントロールできるようになった。
社会とのつながりや人間関係が大きく変化し、そうした「予定外の努力」を求められる場面そのものが減った。
その結果として、目標に向かって無理に努力する性質が弱まり、達成努力が低下した。
代わりに自分で決めたルーティンを淡々とこなす傾向が強くなったのかもしれない。
このブログでも、根性論的な「努力」よりも、自分が自然と没頭できるものを見つけることをたびたび勧めている。
ただし、これは別の問題も生む。
ルーティンから外れた予定や、突然発生する出来事への対応力が弱くなっている可能性がある。
セミリタイア後の生活では、あえて予定外のことを取り入れる必要があるのかもしれない。
自分で選べる余白をつくる
細かく見ていけば、まだまださまざまな考察ができる余地はあるが、あえてここまでにしたい。
理由の一つは、ガチガチの秩序思考から離れる「余白」を持ちたいからだ。
性質の変化を見ると「良い変化」だけではなく、変化や他者に対する不寛容さが高まっている可能性もある。
ルーティンから外れた行動や他者に対して、もう少し寛容になりたい。
もう一つは、データや合理性だけで自分を判断しない「余地」を持ちたいからだ。
感情よりも科学的な理屈や合理性を意識するあまり、半分ロボットのような生き方になりつつある。
だからこそ、もう少し「自分で選べる余白と予想外」を生活の中につくってみたい。
急に思い立って、旅行に行く。
なんとなく遠出する。
何も考えずに、映画館でチケットを買う。
一週間のうち一日だけは、「何をするかをあらかじめ決めない日」をつくるのもいいかもしれない。
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免責事項
心理学で広く研究されているビッグファイブをもとに、1年間の性格傾向の変化を考察しています。
ただし、ビッグファイブは性格を完全に保証するものありません。
考察にはデータだけでなく、筆者自身の経験や解釈に基づくナラティブな視点も多分に含まれています。
あくまで筆者個人の見解として、一つの自己理解の視点としてお読みください。
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